今月の初めだったか先月の終わりだったか、お近づきになった人がいます。
と書くと、ギョッ とされるかもしれませんが、その方は私より一つ年上の女性で
ビオコープ(自然食の店)の駐車場で私が自転車の荷台に買い物籠をくくりつけているところへ
小走りで近づいて来られました。
「こんにちは、ひょっとして貴女セラミスト(陶芸をする人)ですか?」
「はい。。(一応←と言いそうになったけれどこれは言わなかった)」
「貴女のアトリエを見つけてから3~4回足を運んでいるのですがいつも閉まっていて...
いつも硝子戸にへばりついて覗いていたんです、日本人だと聞いていたので今お見かけしてきっとそうだなと思って」
それはそれはすみませんでした、ありがとございます と頭を下げつつお話してみますと、
彼女(以下L.F)はコンテンポラリーのダンサー兼振付師で、我が田舎町で毎年開催されているコンテンポラリーダンスフェスティバルは彼女が発起人であるということ、
私がピナバウシュはじめコンテンポラリーダンス好きということで盛り上がり、
L.Fのご主人はクラッシックギターを作るMOFの楽器職人(MOFとはフランスの国家公認最優秀職人章)で、日本に仕事を兼ねて何十回も行っているということ、
で、日本の話で盛り上がり、
私がチェロを弾くと言うとそこでまた盛り上がり...
印度のヴェジタリアンという印象のL.Fはオリジンがモロッコのフランス生まれの仏人、
ご両親の希望でモロッコの言語、文化、宗教は学ばずにフランス人として育ったそうで
生まれ故郷は私が最初にフランス語留学した町だったり...
「私達まだまだ話すことが沢山ありそうですね」
30分ほど立ち話をし、連絡先を渡して家路につきました。
すると翌々日、私のアトリエへL.Fとご主人が訪ねて来てくれました。
よくお似合いの素敵なカップル、途中からブルトンさんも加わって四人で話始めると、
なんとギター職人の御主人も若い頃は(今も)音響に深く興味を持っており、
30年くらい前のほぼ同じ時期に(歳がバレる...)パリの同じラボで研究員であったとのこと、
共通の知人が何人も居たり...
まさかこんなにマニアックな世界の話をこのブルターニュの小さな田舎町でするとは...
二人とも目が真ん丸になっていました。
更にこの日はサプライズで御主人が近年ギターとは別に製作しているという尺八の披露(御本人は嫌がったそうなのですがL.Fがどうしてもと言って持って来てくれたそう)
即興で演奏してくださりました。
アトリエに響く尺八の渋い音色、ものすごく格好良かったです、ブルトンさんも私も大感動。
尺八は日本で師に就き、今では師範のお免状も持っておられるとのこと。
そして美術品の様に美しい御自信作の尺八、竹と漆は日本から取り寄せ、ブルターニュで製作されたものが再び日本へ輸出されているそう。

それから今度は彼らのお宅へディナーへお呼ばれ。
我が家から車で15分ほどの隣村のはずれにある彼らの住まいは、
門を入った途端にため息が出るほど素敵なお庭、家、御主人のアトリエ、
そして今御主人自ら修復中で来春完成予定のチャペル風のカルチャー施設(アーチストが滞在したりコンサート、ダンス、エキスポなどの多目的スペース)。
「21年前ここを購入した時は何も無い廃墟とツタの生い茂っただけの荒地だったの」とL.F。
アペリティフもお食事も私にはとっても嬉しいヴェジタリアンメニュー(ほぼビーガン)、
デザートはご主人お手製のノンシュガーの庭のプラムのタルト(後から聞くとL.Fは一年ほど前から砂糖断ちを試みているとのこと ←レモンケーキ焼いて持っていってしまった私、、、)
一晩中話の尽きない四人、中でも異口同音話題の中心となったのは、
我が田舎町の文化に対する意識の乏しさ、、、
L.Fが8年続けているダンスコンテンポラリーフェスティバルも一年目は観客一日13名だったそうで、、、(同時期に開催される別の会場では一日400名!)
「でも住民の層も少しずつ変わって来ているし私には希望の光りが見えてきているの、それに私一度こうと思ったら諦めないタイプなの」と森進一をより静かな語り口にした風のL.F、
肉のそぎ落とされた骨格と光る瞳の奥にはとても強いものを誰もが感じる。。
L.Fも御主人も今後はこの町で音楽のイベントを計画したいと言います。
それは私達も大いに望むところで、私で力になれることがあればボランティアで参加させてねと話しました。
一年の半分以上世界中ダンスの巡業に出ているL.F、今週はドイツそれからスイスで舞っているはずです。
「今秋予定されているパリとレンヌの公演にはポテリを招待するから、ぜひ観て欲しいの」
と言ってもらえてとても光栄、楽しみですがちょっと怖い(かなり前衛的なので、、)です。
フランスの政治家、文豪シャトーブリアンが18世紀末に幼少期を過ごしたコンブール城、
大昔の名声のみのこの田舎町の町起こし。
かなり手強いですが、動かなければ何も変わらない...
この夏のとても不思議な出会い、小さな種がポツッと投げられた感じがしています。