魯山 ROZAN

 
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   西荻窪に《魯山》という器と古道具のお店があります。
  前回の帰国の際に初めて訪ね、店へ一歩入った瞬間に息を飲んでしまいました。
  すごい、好きかも。
  その日は何も買わず、しかしその数日後に出直し、二晩、三晩と忘れられなかった
  ぽてりとして謎のシミのある白釉の片口を買い求めることになります。
  「山形県の平清水という地のものですよ、幕末の頃のものでしょうね、おそらく」と店主さん、
  どうしてそういう事が分かるのだろう?と思いつつ、
  その「お醤油か何かのシミ」のある片口を大切に抱え、実家で再度丹念に梱包し直し
  巴里へ連れて帰ったのが一年と半年ちょっと前。

   自分が陶芸をやる様になって一番変わったことと言えば、
  もの(特に食器類)は余程でない限り買わない。
  いいな、と思っても、「自分で作れる様になろう」と言い聞かせスルー。
  しかし、この《魯山》ではそれが利かない。

   今回は武相荘で白洲正子が普段使いにしていたという魯山人の器や急須を、
  上野では《法然と親鸞展》の後、運良く迷い込んだ常設展で織部釉や伊万里の逸品を
  じっくり鑑賞でき、胸いっぱいになっていたのでもうそれで良しのつもりでいました。

   しかし、日本を経つ前日、最後の自由の日(毎日自由でしたが...)、
  「ちょっと出掛けてきます」と、やはり西荻窪へ向かう。
  西荻は20代前半の頃に何度か古着屋巡りをした思い出がある。土地勘は殆どないけれど
  今も昔ながらの小さな商店街の残る、この町の空気が何だか好きだ。

   西荻窪の北口駅を降りたら善福寺川を目指しててくてく歩く。バスの通る商店街には
  普通の暮らしがある。 本屋、和菓子屋、馬肉屋、鶏肉屋... ほっとする道のりの行く手、
  川の手前にあるのが《魯山》。

   今回もやられた。 あれも、これもいい。店主さんは店の奥で若手の作家らしき男性と
  ものづくりについての深い話をされていた。その分、一つひとつじっくり見れ、
  冷静ぶっていたものの、頭の中が混乱してきた私のところへすっとお茶を出して下さる。 
  遠慮せずに近くにあったおそらく売り物の古びたツールに腰をかけ、店内をゆっくり
  眺める、美味しい番茶。
  それは茶渋でいい感じの色模様のついた湯のみ茶碗だった。
  同じのは無いけれど、今個展をされている作家さんのものだ。
  答えは見つかり、その作家さんの茶碗を二つ、手に取り、離れたところへ置き、
  位置を変え、また手に取り... 納得。

  店主さんにやられたのかもしれない。
  どこかで見た店主大嶌さんの言葉に「ものを通して人を見る」とあった。 
  見透かされている様でちょっと怖い気すらするけれど、それがプロというものなのだろう。

  巴里へ戻り、広げた二つの茶碗は、来るべきところへ来た と勝手に思っている。
  じっと眺めても、飽きない。
  こんなに語りかけることの出来るものって すごい。

  たかがうつわ、されどうつわ

  日々学び、生かそう。 


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by pot-eri | 2011-11-22 00:00 | おでかけ | Comments(0)

懐かしい未来へ... フランス ブルターニュ地方、小さな古い家の修復作業 手さぐりな日々の暮し  *陶のアトリエHP* http://atelieraonoto.web.fc2.com/  


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